展示物

50 潮

海外旅行を経て最初に制作したのは「潮」。制作前年に訪れたのは台湾であるが、現地の土着民族への興味をかき立てられた旅から得たものは何だったのであろうか。この作品からはモデルとなった具象的なモチーフは窺えないが、画面上で抽象文様を繰り返すそれまでの作風から一転し、別々の図案の4枚の型紙で屏風の各扇を型染めし、ひとつの作品と成す。図案の繰り返しはない。形象は抽象的だが、上下に流れる曲線は手書きゆえの力強さがあり、曲線のバランスや染料の色数・配色によって四扇の一体感を生み出している。また、三代澤作品の屏風の裏面はほとんどが板締染による染紙を用いているが、「潮」の裏面は型染で、ひとつの型紙を切り抜いてできる地と図を四扇交互に使い、型染ならではの妙味がある。大型の型紙による型染をこの作品を契機に展開するようになる。

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