展示物

43. 灰釉櫛目角大鉢 (1990年代)

 本作品及び作品ナンバー18「灰釉櫛目角大鉢」などの作品は、主に1990年代以降に製作されたものだ。2002年に出西窯を退任し自宅での作陶に専念し始めたことを思うと、弘光氏の陶歴の中では後期の作品群と言える。
 成形は他と同様に型成形を用いているが、本作品群に関しては、先に櫛目模様を入れてから成形をしている点が重要なポイントである。従来の方法では、先に模様を入れると型に押し付けた際に模様が潰れてしまう為、模様は成形をした後に施していく。しかし当然、粘土板が平らな状態で模様を入れる方が、より自由で生き生きとした線を引くことができる。そこで彼は、粘土板が平らな状態の時に模様を描き入れ、粘土自身の自重を利用して型に入れた後、その上からもみ殻灰を敷いたそうだ。この灰をクッション材にして型に押し込むことで、模様を潰さない型成形を実現した。弘光氏はイギリスのスリップウェアにヒントを得てこの技法を編み出し、自由自在に様々な模様を施していった。

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