展示物

29 絹の道の枝垂桑

最後の国展出品作となった「絹の道の枝垂桑」は象徴的な作品である。それまでの屏風作品の多くは、全体の構成をイメージしつつ、前述の「潮」のように一扇ごとに別々の型紙を使っていた。しかし本作の制作の様子を記録した写真を見ると、この作品は三扇で構成する屏風を一枚の画面とし、ひとつの型紙を使って染色している。それまでの制作にはなかった構図だ。2色に染め分けられた桑の幹から四方に伸びた枝には、いくつもの葉が連なる。画面に使った色はたった3色。その3色が画面にほどよく散りばめられ、リズムを生み出す。また、画面に雲母をひき、2色の染紙で屏風の天地を縁取ることで、枝垂桑の姿が引き立ち、屏風の装飾性を高めている。型染という技法をつかった絵画。そんな表現が相応しい作品である。

PAGE TOP